東ボヘミア紀行

チェコ共和国の首都プラハから100kmあまり、一面に眩しく菜花の咲くボヘミアの平原を、チェコ国鉄の急行に揺られること2時間、終着点フラデツ・クラロヴェ市にたどり着くと、もう夕闇が迫っていました。

  

いにしえのチェコのまほろば、プシェミスル王朝時代に築かれた城塞都市フラデツ・クラロヴェは、エルベ川とオルリツェ川の合流点を扼する、東ボヘミア地方の中心です。北方ゴシックの重々しい大聖堂、ルネサンス様式の色鮮やかなファサード、町中に点在する広大な緑の公園、ハイドンの扮装をした人が今にも飛び出して来そうなバロックの建物に囲まれた広場。

  

二十世紀の戦災を受けずに残った美しい歴史的街並みを見渡すビストロで、肉と野菜を何時間も煮込んだ郷土料理を前に座っていると、フランス語でもドイツ語でもない言葉を話す長身白皙の人々が、周りを行き交います。欧州の東北の奥深く、本当の最深部にまで来たんだあという感慨が、胸の底から湧き上がって来ます。

  

この街は近代の中欧の歴史に「ケーニヒグレーツ」という名前で登場します。チェコの宗教改革が白山の敗戦で潰えて二半世紀、フス派のチェコ人貴族は滅ぼされ国を追われ、ハプスブルク家の支配のもと、厳しい再カトリック化、ドイツ化が進んでいた時代です。ここケーニヒグレーツでハプスブルク軍は、ビスマルクのプロイセン軍に壊滅的大敗を喫しました。

オーストリア帝国の屋台骨がかしいで、歴史が大きく動きます。チェコ人に再び主権と栄光へのロマンティックな夢が芽生えます。その標語は「Pravda vítězí」すなわち、真実は勝利する!

ヨゼフ・コチャールのキュビズム建築が、アルフォンス・ムハのアールヌーヴォー装飾が、ボヘミアとモラヴィアの街々を彩っていきます。

  

とはいえ別になにも、スラブ学の研究に来たわけではなく、今回私がこの地に立ったのは、チェコビールを浴びるほど飲むために決まってるじゃないですか、大学の国際交流関係の職務でした。当地フラデツクラロヴェ大学との留学生交換の具体案協議のために、国際交流センター長の先川教授とともに訪れたのです。

  

私がちょうどこの時期にあったカオスの物理学の学会に出ている間も、当地の学長副学長そして諸学部長との精力的な交渉を先川先生がこなされました。これまでの工科大環境理工学群とフラデツ大科学学部との提携が、双方の全学部を含む全学提携協定へと格上げされました。

  

この秋からさっそく、フラデツ大がEUから得ている「フンボルト・プラス」プログラムの財政支援を受けて、フラデツ大学の八人の学部生院生が、工科大を2−3ヶ月の予定で短期訪問します。3Q以降にキャンパスでチェコ人留学生を見かけたら、是非仲良くなってください!そして高知からも、フラデツ大の美しいキャンパスで学び、フラデッツの絶品のビールを味わいたいという人が多数現れますように。

興味のある学生さんは「東ボヘミアのフラデツ大」と、国際交流センターに問い合わせてください。

[写真は先川信一郎教授撮影]

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